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読売新聞より
食事で培う免疫力
山梨大学と読売新聞甲府支局が共催する連続市民講座「あすの生命と健康を見つめる」の第9回講義が19日、甲府市武田の同大甲府東キャンパスで行われた。医学部の中尾篤人教授(免疫学)が「食と免疫~食物が免疫系の発達や機能に与える影響~」と題して講演。会場いっぱいの約250人の聴講生を前に、食事に支えられた免疫の仕組みやアレルギー反応について解説、母乳のアレルギー疾患への効用など最近の研究も紹介した。
免疫は体のバリア
ばい菌が多い肥だめなどでへっちゃらなハエでも、免疫遺伝子をおかしくすると、体にカビや細菌が出て死にます。人間は、がん患者が抗がん剤でがんは良くなっても、免疫の働きが悪くなり感染症で亡くなる方が意外に多いのです。
地球上は細菌やウイルスなど目に見えない病原体に満ちていて、我々が病気を発症せずにいられるのは体を守る免疫がバリアのように何重にも体に張り巡らされているからです。
わかりやすい免疫は皮膚ですが、唾液や涙、汗、耳あかといった分泌物も、抗菌物質が必ず入って
います。おなかにばい菌が入ってしまっても、胃酸があるので通常のばい菌はほとんど生きていけません。
体にすむ菌も免疫
私たちの体にすみ着いてばい菌に対抗してくれるのが常在菌です。腸内の常在菌である乳酸菌やビフィズス菌は、体に有用な栄養素を作ると同時に、ばい菌を排除しているのです。
せっけんで皮膚を洗いすぎると、皮膚の常在菌が消えて、かえってばい菌がすみやすくなり、病気の危険を高めると言われています。
親や祖父母が赤ちゃんをすりすりして抱きしめるのは、赤ちゃんが生まれてきた環境にすむ病原体に有効な常在菌を移す行為です。イヌやネコの常在菌は、人に害を及ぼす可能性もあるので、すりすりするのはあまり勧められません。
血液中のリンパ球
けがでバリアが崩れることがあります。こうした時などに病原体を排除するのが白血球。このうち最も重要なのがリンパ球です。
リンパ球は二つの武器を持っており、一つは病原体を殺す「T細胞」。もう一つは「B細胞」と呼ばれ、病原体由来の毒を中和したり、リンパ球以外の白血球が病原体を攻撃するのを助けたりする抗体を作ります。T細胞や抗体は病原体に感染後、1週間ぐらいたたないとできません。ここが唯一の欠点で、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)に世界中が戦々恐々としたのは、数日でウイルスが体中に広がり、リンパ球が活躍する前に肺炎を起こして死ぬからです。この時間差を補うのがワクチン。感染前に病原性をものすごく弱めた病原体を体に入れ、T細胞や抗体をあらかじめ作るのです。
薬より栄養を
免疫力をつけるには細胞を元気に保つための十分な栄養の摂取が大事です。アフリカ中部地域では多くの子供たちが感染症で亡くなっていますが、薬より栄養を取れるようにしないと解決につながらないのです。
人間には、外から摂取しなければならない必須の栄養素が約40種あります。豚肉は、抗体の構成要素でもあるたんぱく質の元となる各種の必須アミノ酸を満遍なくたくさん含んでいます。
「足りない栄養素はサプリメントで」との考えには落とし穴があります。
1990年代、緑黄色野菜に入っている成分のサプリメントを食べれば、がんの発症リスクを減らせるのでは、と外国で三つの研究が行われました。1万8000人~3万人の喫煙者らに、ニンジンに多く含まれるベータカロテンなどを飲ませ続けた結果、二つの研究で肺がんリスクが高まり、もう一つも「肺がんや心臓病を予防しない」との結論でした。ベータカロテンは植物の免疫である抗菌物質。細菌などを殺す物質なので過剰摂取は良くないのです。
免疫の進化
免疫の仕組みは地球上の生物が何億年もかけて進化させてきました。リンパ球は、ヤツメウナギという種から備えるようになったと言われています。生物はその後、あごと歯を持ち、多種のものを食べ、病原体をいっぱい取り込むこととなり、免疫を進化させる必要に迫られたと考えられます。
人が優れた免疫を子孫に残そうとしていることを示す有名な実験があります。大学生ぐらいの男女を100人ずつ呼び、シャワーを浴びた男性が新しいTシャツを着てグラウンドを10周。外見を見せずにシャツの匂いを女性にかがせて、どの匂いが好きかと尋ねました。女性が選んだ男性との免疫遺伝子の関係を比較したら、女性は自分と似てない遺伝子を持つ男性の匂いを好む傾向にありました。
この理由は、例えばインフルエンザウイルスに弱くエイズウイルスに強い免疫を持つ女性は、インフルエンザウイルスに強くエイズウイルスに弱い男性を選び、両方のウイルスに強い免疫を持った子供を残そうとしていると考えられます。
ジャンクフードばかり食べてバランスの悪い食事をしていると免疫力が弱くなり、女性にあまりもてないことになります。
10年で2倍に
私は内科医の研修医時代にぜんそくになったこともあって、ぜんそくや花粉症などのアレルギー性疾患の研究をしています。
アレルギー性疾患は本来寄生虫に対する免疫反応が、花粉などの無害なものに対して起きている症状です。2003年の統計で日本人の3人に1人がアレルギー性疾患。山梨では2人に1人が花粉症と言われます。スギ花粉が体内に入った時、涙やくしゃみ、鼻水を出して鼻が詰まるのは、花粉が体の奥の方にいかないようにしているのです。なぜ免疫がスギ花粉を寄生虫と勘違いするのか、理屈はまだわかりません。
子どもの食物アレルギーはここ10年で2倍になり、特に3歳以下で増えています。卵がだめだと、小麦も牛乳もと、複数の食材が食べられなくなることが多く、家族も大変です。給食の最中に小学生がショック症状を起こして死亡することがありますが、20歳以下の死因で食物アレルギーが非常に高い率になっています。
アレルギー性疾患が増えているのは日本や米国、欧州。寄生虫が圧倒的に減っていることが、原因でないかと考えられています。
アレルギー物質を注射
我々のような内科医はアレルギー性疾患の患者に、「卵を食べないで」「花粉に触れないように」と言うしかないのが実情です。なんとか対処法を開発しようと研究しています。
口から入ったたんぱく質には免疫が反応しないという説が昔から知られています。マウスにダニを注射して起こるアレルギー反応がありますが、あらかじめダニを食べさせると、反応が起きないというものです。うまくいっていませんが、スギ花粉のエキスを食べれば、花粉症にならなくなるという治療法が行われています。食べ物として口から次々入れているものに免疫反応を起こしていたら、身が持たないので無視するというものです。
母乳の効果
最近研究されるようになったのが母乳の免疫に対する効果です。アレルギー性疾患の子供には、人工乳で育った子が圧倒的に多いことが分かっています。母乳には免疫の働きを調整するTGF-βという物質が入っていて、濃度が高い母乳を飲ませた赤ちゃんは、1歳時のぜんそくの発症率が圧倒的に低かったという米国の実験結果があります。
母親が食べた成分が母乳にわたるので、母親がサバを食べれば、母乳を飲んだ赤ちゃんはサバのたんぱく質をとることになる。TGF-β濃度が高い母乳だった場合、赤ちゃんはサバに対する食物アレルギーになりにくくなり、濃度が低いとなりやすいということも示されています。
現在、粉ミルクにTGF-βを入れたらアレルギー性疾患の予防に役立つかといった研究をしています。
最近のエイズ患者
エイズは感染後発症まで10年と言われます。最近のエイズ患者を見ていると、日本人男子は3、4年で発症する人が増えているように感じます。リンパ球がエイズウイルスとの戦いにすぐ負けてしまい、発症が早まっているのです。
薬も処方しますが、「食事をしっかり取る」「規則正しい生活をする」ことを徹底するように言うと、意外と発症時期を遅らせることができていると実感しています。これらのことがいかに免疫をつけるのに大事かということです。
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