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宮部みゆきさんシリーズは結構読んでいますが、先日ようやく読み終えたのが「名もなき毒」。
実はこの小説の中でシックハウス症候群という言葉が使われているので以前から読んでみたかったんですよね
ということで小説からシックハウス症候群が使われている文章を抜粋してみました(以下です)。
「お気になさらないでください。子供さんのことなら、心配なのは当然です」黒井次長は顔を上げたが、瞳の中心はまだ、どこかにある娘の病室へと向いている。
「喘息なんですよ。」今朝方でかい発作を起こしまして救急車で病院に搬送されたのだが、空きベッドがないとかでほうぼうへ回され、やっと落ち着き先が見つかったというのだ。
私は時計を見た。午前十時を過ぎたところだ。
「まったく、何でこんなことになったのか」頭を振って、黒井次長は言った。
「ご存知ですか、シックハウス症候群とかいう、そのわけわからんシロモノを」
私は目を瞠った(みはった)。
ここでこの話題にぶつかるとは。
知っていた。知らいでか。
「実は我が家はその話で持ちきりです」私は正直に答えた。
黒井次長の細い目がぐっと広がった。
「じゃ、お宅でも子供さんが具合が悪くなってるとか?」
「いえ、幸いそういうことではないんです。中古住宅を買ってリフォームをしてまして、家内がひどく神経を尖らせているんです」
黒井次長は両手をテーブルに乗せると、深々とうなずいた。
「そりゃいいですよ。気をつけた方がいい。うちももっと注意してりゃよかったんですが」
そして話してくれたのだった。
昨年秋に社宅を出て、横浜市内に念願のマイホームを得たこと。一般的な間取りの二階家で、県内では名の通った業者の建売住宅だったこと。
「一生に一度の買い物ですからね。私も家内も、それなりに勉強して、知識も持っていたつもりでした。だからシックハウス症候群についても、まるで知らなかったわけじゃない。新聞でもニュースでも取り上げてましたしね。ただ、やっぱりどこか他人事でね。ちゃんとした住宅業者の物件なら。こっちがそんなことまで心配しなくてもいいだろうと思ってたんですが」
住宅用の建材や塗料、壁紙の接着剤などに含まれている化学物質が人体に悪影響を与え、アレルギー性皮膚炎や喘息、頭痛など、さまざまな疾病を引き起こす。
簡単に言うならば、それがシックハウス症候群だ。
「こういうことがあるんだって騒がれ始めて、もう四、五年にはなりますか?最近は規制が厳しくなって、おかげで下火になったと思ってたんですけどね」
実際、新規の建売住宅や分譲マンションにからみ、この問題大きく取り沙汰されることは少なくなったと私は思う。単にマスコミの関心が薄れ、報道される事案が減っただけだということはないだろう。
都内のある小学校が老朽化した校舎を改装したら、学童のあいだにシックハウス症候群が発生し、全面的な再改装をすることになったというニュースを見たのは、一年ばかり前だったろうか。
あの時も、「あのシックハウス症候群は、住宅だけの問題ではない」という取り上げ方をされていた。公共の建築物についても規制と監督を厳しくするべきだ、と。
「次長のお宅の場合は、原因がはっきりしているんですか?」やや婉曲な言い方で、私は尋ねた。
いきなり、業者がインチキや手抜きをしていたのか、とは訊きにくかったからだ。
「それがね、よくわからんのです」黒井次長は眉を寄せて真実、辛そうな顔をした。
「こっちはてっきり、業者がウソをついてたんだろうと思ってね。責め立てましたよ。ところが検査すると、引っかかってきそうな化学物質の数値は、みんな基準以下なんです。ただ、黴が出てる。黴の胞子が。それが娘の喘息の素だろうと。他には考えられないというんですよ。」
室内の空気中に含まれる黴の胞子や埃、いわゆるハウスダストは、確かにアレルギー症状の原因となる。
が、これのみを指してシックハウス症候群とは呼ばないだろう。
「平均より、飛び抜けて黴の量が多いわけですか」と、私は訊いた。
「こういうものの平均値があるかどうか知いませんが・・・」
「そんなのは私も知りませんよ」黒井次長は苦笑した。
「業者だって知りゃしないんじゃありませんか。ただ、うちの場合、壁紙がカビてる とか結露がひどいとか、そういう状態ではないんです。少なくとも、目に見える場所はね。だから家内は、見えない土台のどっかに水が滲みてて、それが黴を呼んでるんじゃないかって疑っています。」
業者は否定しているという。
「それまで元気だった子供が、引っ越した途端に喘息が出たわけですから、家内にしたら、こりゃもう家が原因だとしか思えないんですね。あなた、これこそがシックハウス症候群ってものなのよ、と。でまぁ、本を読み漁ったりネットで調べたり、講演会を聞きに行ったりして、猛烈なにわか勉強をしてましてね、これが始まってからもう一年近くになりますが、今じゃ業者が太刀打ちできないくらい詳しくなってます。」
この一年のあいだに、検査会社が三社入ったそうだ。最初の一社は住宅販売会社が呼び、費用も負担してくれたが、あとの二社は黒井家の自腹である。
「それでも黴しか出ないんですが」「会社によってバラつきがあるんです。ホルムなんとかかんとかという。」黒井次長は苦笑した。
「何度聞いても覚えられないんですがね、なんかそんな化学物質が出たこともありました。でも、問題になるほどの量じゃない。それに、これは普通、喘息を引き起こす物質じゃないとかいう。家内はそれを聞いてヒステリーを起こす。そのあいだも娘はしょっちゅう発作を起こすので、いやもうたまりません。」
救急車を呼んだのは今回で二度目で、最初のときも入院したそうだ。
「中二です。ぐずぐずしてるとすぐ受験期でしょう。だからなおさら家内は躍起になってるんですよ。」
実は小児喘息があった子でしてね、と続けた。
「幼稚園のころです。でも学校にあがると症状が消えたんで、それっきり気にもしなくて」「しかし今度の喘息は、それとは違うでしょう。」
とは思うんですよ。こっちはね。
だけど業者の方は、もともと子供さんに喘息の気があったなら、普通の人間よりアレルゲンに過敏である可能性がある、うちとしては、定められた基準値をクリアしている以上、そこまでは面倒みきれないと、 業者としては、そう言いたくなるのもわかる。
「家内は裁判を起こす」と言い出してます。私はそこまでやらんでも言い淀んでから、とにかく娘が元気になってくれりゃ、それでいいんですと言い足した。
「杉村さんのところのリフォームは、マンションですか一戸建てですか」私の方に話題を振り向けてきた。
「一戸建てです。家内も私も家の造りが気に入ったんですが、前の持ち主が絨毯が好きだったのか、そこらじゅうに敷いたり貼ったりしてありまして。階段やトイレの床まで」
「そりゃまた手間だ」
ひと目見て、「これこそダニの巣窟だわ」と、私の妻、杉村菜穂子は叫んだものである。
ダニがうごめいてる音が聞こえてきそうだわ!「で、さあリフォームだとなったら、うちの家内もにわか勉強を」
「そうそう」黒井次長は嬉しそうにくつくつと喉で笑った。
言い得て妙な表現だ。
さあ大変だ、やることがいっぱいあるぞ、備えあれば憂いなしだと腕まくりをする・・・台風が近づくと、私の祖父も父も、いつもそんなふうにやたら張り切った。台風がやってくることを楽しんでいるようにさえ見えたものだった。
<言われてみれば、今の菜穂子のハイテンションは、あれとそっくりだ。
「近頃じゃ、私が聞き取れないような難しい塗料の成分や化学薬品の名前をぺらぺらと」
「言うでしょう?ね、言うんですよ。言い並べるんです。女が化学に弱いというのは、ありゃ間違った通説ですね。考えてみりゃ、女性はみんな化粧品に詳しいんですから。何でそんなことを知ってるんだというくらいよく知ってますからね。化学がわからんはずはない。」
壁紙の接着剤や床の艶出し剤と、乳液や美容液を一緒にするわけにはいくまいが、一理ある。こうして話しこんでいるうちに、テープがいっぱいになってしまったというわけだ。
以上がメインでシックハウス症候群という言葉が出てきた文章になります。
ここで思ったのが、書いてあることはほぼ実話に基づいてですね。
正直、この手の話はよくあります。というか主流かも・・・
取りあえず、気になっていた小説が読めてよかったです
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