シックライフ・シックハウス症候群・化学物質過敏症・アレルギーなどに関する事柄について事務局よりお届けいたします。
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毎日新聞より
「F☆☆☆☆」も防げず メーカーは換気促す
岩手県南部・奥州市の市立胆沢第一小学校(児童415人)で昨年7月中旬~10月初め、校舎の使用が全面的に中止された。前年度からの大規模改修工事で、教室の壁や床など内装材を一新したが、体調不良を訴える児童が相次いだためだ。
当時4年生の女児が、最初に頭痛を訴えたのが3月初め。工事から出る化学物質が原因、との医師の診断書が提出され、翌4月には新4年の男児も、同様の症状を訴えた。
市教委は大型扇風機などで換気を強化し、工事途中で接着剤の種類も替えた。だが、ホルムアルデヒド、トルエンなどの「特定測定物質」5物質の濃度を測っても国の指針値を超える値は出ず、原因は不明だった。
その後も児童が相次いで体調を崩し、7月にようやく教室の使用が中止に。市長は市議会で陳謝した。結局、不調を訴えた児童は74人に上り、22人がシックハウス症候群と診断された。
診断を受けたある女児の父親は「娘は頭痛を抱えながらも通学し、重症化してしまった。しばらくは歩いて通えなかった」と話し、別の女児の母親は「子どもはシャンプーでさえ、気分が悪くなった。だるい時は、周囲には怠けているように見えてしまい、つらい」と訴える。
同市教委の及川敏幸・学校建設推進室長補佐は「シックスクールが起きるとは『まさか』という感じだった。国の基準をクリアした『F☆☆☆☆』(エフ・フォースター)規格の建材を使えば、問題は起きないと考えていた」と肩を落とす。
「F☆☆☆☆」の「F」はシックハウスの原因となるホルムアルデヒドを指し、星の数が多いほど放散量が少ない。ホルムアルデヒドは建築基準法で規制されているが、最良の四つ星「F☆☆☆☆」は使用面積に制限がなく、今はこの規格の建材を使うのが業界標準だ。「F☆☆☆☆使用でシックハウス対策も万全」などとうたった分譲住宅のチラシも目立つ。
だがF等級は、ホルムアルデヒド以外の化学物質は無関係。シックハウス対策に詳しい京都市北区の建築士、渡辺公生さんは「建築関係者でもF☆☆☆☆さえ使えばシックハウス対策はOK、と思っている人が多い。室内と関係ない外装にF☆☆☆☆を使ったとPRする業者もあり、いかにシックハウス問題が理解されていないかを示している」と嘆く。
昨年12月に横浜市で開かれた「室内環境学会」では、耳慣れない化学物質が原因のシックハウスが相次いで報告された。
北海道立衛生研究所の小林智・生活保健科長らのグループは、道内のマンションや小学校で使われた水性塗料から、高濃度の「テキサノール」が揮発していたと発表。塗料は「F☆☆☆☆」だったが、マンションを購入した30代の女性は入居直後、気分が悪くなり実家に戻った。空気調査に立ち会った際も、立っていられなかったという。
無色無臭の「イソドデカン」や、「2エチル1ヘキサノール」などの検出例も報告され、いずれも「F☆☆☆☆」の建材を使った建物からだった。
小林さんは「問題の中心は、ホルムアルデヒドなどから規制外の物質に移っている」とし、「どんな毒性があるか分からない物質を使うより、トルエンなど特性が知られたものを注意して使った方がましかもしれない」と問題の複雑化を指摘する。
塗料メーカーでつくる「日本塗装工業会」の和田英男・製品安全部長は「ホルムアルデヒドやトルエンを放散する樹脂や添加剤を避け、ミネラルスピリット(シンナーの一種)などの弱溶剤が代用されている」と説明。「室内で使う時は有機溶剤系でなく水性塗料を勧めているが、水性でもVOC(揮発性有機化合物)はゼロではない。業界団体で塗装後の換気を促す張り紙を作成しており、工事関係者や利用者への周知に努めている」と話す。
シックハウスの原因物質の多様化は、診断や治療も難しくしてしまう。宮田幹夫・北里大名誉教授は「最近はシックハウスの影響を示す眼球運動に異常が見られるのに、ホルムアルデヒドやトルエンの測定値には問題のないケースが大半」という。「原因物質が不明でもシックハウスは起きていることを、社会が認める時期に来ている」と訴えている。
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