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山陽新聞社より
一歳の男の子が朝から 咳 ( せき ) をしていましたが、おしゃべりもし、ミルクの飲みも悪くなかったので、お母さんは様子をみていました。ところが、夜になって次第に機嫌が悪くなり、呼吸のとき「ヒューヒュー」と音がし、 肋骨 ( ろっこつ ) の下や肋骨の間、のどの下が引っ込む(陥没呼吸)ようになり苦しそうに見えたので救急外来を受診しました。
お母さんの判断は適切でした。この子は「ぜんそく発作」と診断され、吸入などの治療を受け軽快しました。放置していれば、呼吸困難がより悪化していた可能性があります。
ぜんそくは正確には「気管支ぜんそく」と言い、気管支が狭くなって空気が通りにくくなるために呼吸困難発作を繰り返す病気です。発作が起こると、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」と音( 喘鳴 ( ぜいめい ) )がします。
咳も出ますし、時には粘り気のある 痰 ( たん ) が出ます。ひどい発作になると会話ができなくなり、眠れなくなり、陥没呼吸や起座呼吸(横になると呼吸が苦しく座位となる)がみられます。
子どもの気管支ぜんそくの90%は家のほこり、ダニ、かび、犬や猫の毛に対するアレルギーが原因といわれています。風邪(ウイルス感染)、たばこの煙、冷たい空気なども発作の誘因になります。従って家の環境整備が大切であり、親のたばこは厳禁です。
もちろん、子どもが呼吸困難を呈する疾患はぜんそく以外にも肺炎・気管支炎・細気管支炎・クループ・気管支異物など数多くあり、病気の種類・程度によっては重篤で緊急を要する場合があります。
ぜんそくに限らず、呼吸状態として喘鳴、陥没呼吸、起座呼吸、多呼吸、チアノーゼ(皮膚が紫色)が認められるか否か、また生活状態として動作・会話・食欲・睡眠などの障害程度を判断し、救急受診など適切な対応が必要です。
ぜんそく発作が起きた場合、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」も強くなく、会話もでき眠れるようであれば、冷たくない新鮮な空気を吸わせ、痰を切れやすくするために水分を十分取らせます(緑茶・紅茶のカフェインは気管支を広げる作用があります)。大きい子であれば腹式呼吸をさせて様子を見てください。ただし、ぜんそく発作は夜間に増悪しやすいことを考慮しておく必要があります。
会話ができない、夜間何度も目を覚まし眠れない状態や、陥没呼吸、起座呼吸が見られるようであれば迷わず受診してください。興奮して暴れたり、唇が紫色になったり、気を失うような状態であれば救急車を呼んでください。
乳児の場合は呼吸困難症状が分かりにくいのですが、機嫌が悪くなる、顔色が悪くなる、ミルクの飲みが悪くなる、呼吸が速く苦しそう(喘鳴)であれば、夜間・休日を問わず受診が必要です。
(片山雅博・三菱水島病院小児科部長)
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