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All About記事(清益 功浩氏)より
蚊に刺されただけなのに、重い症状を引き起こすことがあるのを知っていますか? ここでは「蚊アレルギー」について説明したいと思います。
実は知らない蚊のあれこれ
まずは普通あまり知られていない蚊の生態について、軽く解説しましょう。蚊は、昆虫でハエ目カ科に属します。オス・メスともに長い口吻を持ち、上唇で食物を吸収し、下面に唾液を送り込む管を持っています。蚊の主食は花のミツや草の汁などで、動物の血ではありません。血を吸うのはメスだけで、産卵期に吸血します。卵を発達させるために必要なタンパク質を得るために、動物の血液が必要なのです。体温や二酸化炭素などで動物を探し、血を吸うために寄ってきます。
蚊が血を吸う時に、こちらに送り込んでくる唾液は、刺した時に痛みを感じさせない麻酔作用や、血が空気にふれて固まるのを防ぐ作用などを持ついろいろな成分が含まれています。この唾液腺物質が、刺された後の腫れや痒みの原因です。
蚊アレルギーとは?
蚊に刺された場所では、注入された唾液腺物質に対するアレルギー反応がおこります。反応の強さによって症状が異なり、個人差が大きいのが特徴です。
このアレルギー反応には2種類あります。
・即時型反応:刺された直後からかゆみ、腫れ、発赤が出現
・遅延型反応:刺された翌日以降に発赤、腫れ、発疹、水疱などが出現
特に乳幼児は体温が高いので、蚊に狙われやすく、強い遅延型反応を起こすことが多いと言われています。時に重症化する蚊アレルギーがあり、蚊に刺された部分の発赤や腫れだけでなく、全身に
発熱、蕁麻疹などの全身症状が出てきます。
重症化する原因の1つ「EBウイルス」
EBウイルスとは、水疱瘡などのウイルスや、ヘルペスウイルスの仲間です。発見者の名前にちなんで、この名前がつけられています。EBウイルスは、1歳で12.5%、2歳で60%、20歳までに90%以上が感染すると言われています。唾液を介して人にうつります。
蚊刺過敏症とは、蚊に刺された後の部分の症状が強く、水泡(みずぶくれ)、血泡(ちまめのようなもの)から壊死・潰瘍(皮膚がただれ、じくじくし、へこむ)まで起こり、発熱などの症状を伴うこともあります。原因としては蚊の唾液腺に対する免疫とEBウイルスに対する免疫反応が関与しています。発熱だけでなく、リンパ節が腫れたり、下痢などがみられることもあります。
蚊刺過敏症の場合、EBウイルスが持続的に感染していること(慢性活動性EBウイルス感染症)があるので、様々な合併症を起こします。悪性リンパ腫や血球貪食症候群(白血球、赤血球、血小板をマクロファージなどの白血球が食べてしまう病気)などを起こすと大変です。蚊アレルギーがひどい場合は、EBウイルスの検査をしておいた方がいいかもしれません。
油断大敵! 蚊が関与する病気
蚊は、多くの病原体を運びます。日本脳炎、野口先生が亡くなられた黄熱病、デング熱、マラリア、フィラリア、西ナイルウィルス熱症などたくさんあります。参考までに、以下でご紹介しましょう。
■ マラリア
ハマダラカが媒介する伝染病です。マラリアは原虫で、感染すると肝臓で増え、赤血球に侵入します。2週間程度の潜伏期間で、3日ごとや4日ごとに高熱を繰り返します。抗原虫薬で使用しますが、最近は薬に効きにくいマラリアもあり、予防が大切です。
■ 日本脳炎
コガタアカイエカが媒介する伝染病です。ブタやサギなどの野鳥でウイルスが増えます。蚊に刺されてから6~16日潜伏期間を経て、約300人に1人が脳炎になってしまうと、発熱や頭痛、吐き気、嘔吐が起こり、けいれんや意識障害を起こし、後遺症を残したり、死に至る病気です。予防接種が有効です。
■ 西ナイル熱
アメリカで大問題になっています。蚊に刺されてから3~15日の潜伏期間を経て、3~6日間程度の発熱、頭痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振などの症状が見られ、たいていは1週間程度で回復します。高齢者や体力の無い人では、高熱や、麻痺、昏睡などの髄膜炎、脳炎を起こし、死に至ることもあります。
アレルギーや様々な病気を起こす蚊の対策
✓ 蚊アレルギーの治療
まずは、刺された部分に抗ヒスタミン薬の外用薬を使用します。かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服を行うことがあります。蚊に刺された部分は、「じんましん」を起こしていますので、「じんましん」の治療に似ています。ただ、遅延型免疫反応が強い場合はステロイドを使用します。
✓ 日常生活での注意点
・できるだけかきむしらないよう、爪を伸ばさない
・刺された部分を冷やす
✓ 何よりも予防が重要!
・蚊取り線香や防虫剤を適切に利用する
・外出時は虫よけスプレーを使用し、蚊に刺されないようにする
・蚊の発生を防ぐために、水溜りなどを減らす
・屋内への、蚊の侵入を防ぐ。窓を開けない、網戸にする、網戸に虫よけスプレーをしておくなど
夏のこの時期は、蚊には特に注意が必要です。蚊アレルギーがひどい時には医療機関に相談した方がいいでしょう。
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